事業承継事業承継で会社の歴史を残すには?資料の集め方と聞き取りの始め方
公開:更新:執筆:荻野光希(TADOROOTS 調査担当)
事業を引き継ぐ準備では、決算書や契約書、株式のことが中心になりがちです。けれど、会社を長く支えてきたのは、数字や書類だけではないはずです。
- なぜこの事業を始めたのか、くわしく聞いたことがない
- 過去の大きな判断の背景が、社内のだれにも書き残されていない
- 記録を残したいけれど、何から集めればいいか分からない
事業承継の準備では、株式や資産と並んで、経営理念や過去の判断の背景を、次の世代に引き継ぐことも大切です。会社の歩みを記録に残しておくと、これからの経営を考えるときの、たしかな拠りどころになります。
この記事では、TADOROOTSで家系や会社の歩みを資料と聞き取りから記録にまとめてきた調査担当が、事業承継で会社の歴史を残すための、資料の集め方と聞き取りの始め方をご紹介します。
この記事を読むと分かること
- 事業承継の中で、会社の歴史の記録が果たす役割
- 資料を集める順番
- 先代への聞き取りの進め方
- 使い道と公開範囲の決め方
事業承継の中で、会社の歴史の記録はどんな役割を持つ?
中小企業庁は、事業承継で引き継ぐものを「人(経営)」「資産」「知的資産」の3つに整理しています。会社の歴史の記録は、このうち経営理念・ノウハウ・取引先との信頼関係などの「知的資産」を、言葉にして引き継ぐための材料になります。
ただし、記録を残すことが、経営権や株式の引き継ぎの代わりになるわけではありません。株式・税・契約の手続きは、記録づくりとは別に、専門家と進めましょう。
資料を集める順番
会社の歴史の記録は、年表づくり → 当時の資料集め → 聞き取りの順に進めると、無理なく形になります。
| 段階 |
集めるもの |
| 1. 年表をつくる |
登記簿、過去の会社案内、主な契約の記録など。創業・設立・移転の年を区別する |
| 2. 当時を知る資料を集める |
写真、日記、新聞記事、製品の資料など。年代と持ち主を書き留める |
| 3. 話を聞く |
先代、長く勤めた社員、取引先など。誰の記憶かと、掲載してよいかを確かめる |
取引先や社員の情報、公開していない技術などは、社外向けの記録にそのまま載せないよう注意しましょう。資料が少なくても、「どこに何があるか」「何が分からないか」の一覧から始められます。
聞き取りは「決断した場面」を一つずつ
先代への聞き取りは、「経営理念を教えてください」と大きく聞くより、具体的な場面を一つずつ聞くほうが、その会社らしい言葉が出てきます。
- 最初の仕事は、どのように受けたのか
- 方針を変えた時期に、どんな選択肢があったのか
- うまくいかなかった経験から、何を変えたのか
答えは、話した人の言葉として残します。日付や契約などは、別の資料で確かめましょう。人によって記憶が違うときは、無理に一つにまとめず、それぞれの話として残します。聞き取りの進め方は、こちらの記事でくわしく紹介しています。
使い道と公開範囲を、先に決める
記録は、誰が、何のために読むのかによって、載せる内容が変わります。
- 後継者や幹部が読む社内の記録
- 社員みんなで共有する記録
- 採用ページや会社案内など、社外に公開する記録
社内の記録から公開用の原稿を作るときは、機密情報・個人情報・写真の使い方をあらためて確かめましょう。採用ページでの使い方は、こちらの記事で紹介しています。
まとめ:会社の歩みは、次の経営の拠りどころ
- 会社の歴史の記録は、事業承継の「知的資産」を引き継ぐための材料
- 年表づくり → 資料集め → 聞き取りの順に進める
- 使い道と公開範囲を先に決め、手続きは専門家と別に進める
会社の歩みを言葉にする作業は、先代にとっては歩んできた道を振り返る時間に、後継者にとっては会社の原点に出会う時間になります。その記録が、次の世代の判断を静かに支えてくれるはずです。
会社の歩みを、伝わる記録に
TADOROOTSの「ルーツ経営プログラム」では、先代や社員への聞き取りと手元の資料をもとに、会社の歩みを記録にまとめるお手伝いをしています。まとめた記録は、カンパニールーツブックとして社内で受け継ぐことも、採用や会社案内の素材として使うこともできます。くわしくはルーツ経営プログラム、料金はプラン診断・料金一覧でご覧いただけます。
よくある質問
Q. 創業者がすでに亡くなっていても、記録は作れますか。
残っている資料や、当時を知る人の話から作れることがあります。確かめられない発言や動機を、本人の言葉のように作ることはしません。
Q. 資料がほとんど残っていません。
「どこに何があるか」「何が分からないか」の一覧から始めましょう。登記簿や古い会社案内、取引先に残る資料など、思わぬところから見つかることもあります。
Q. 記録をつくる費用は、経費になりますか。
使い道や支出の実態によって扱いが変わります。税理士にご確認ください。
Q. 社員にも話を聞いたほうがいいですか。
長く勤めた社員の話は、先代とは違う角度から会社の歩みを照らしてくれます。話を聞くときは、記録と掲載について了解を得ましょう。
Q. 記録があれば、後継者は会社を継ぐ気持ちになりますか。
約束はできません。記録は、後継者が会社の原点を知り、自分の考えを言葉にするための材料です。引き継ぐかどうかの判断は、本人の意思を大切にしましょう。
Q. どのくらいの期間で作れますか。
集める資料や話を聞く人の数によって変わります。まずは目的と、残したい範囲を決めることから始めましょう。
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参照資料(2026-10-16確認)
聞き取りと記録のまとめ方は、本記事の編集上の提案です。