事業承継後継者と会社の未来を話すには?創業の記録を対話の材料にする方法
公開:更新:執筆:荻野光希(TADOROOTS 調査担当)
事業承継の話し合いは、会社の数字や手続きのことだけでなく、それぞれの思いが重なるぶん、難しさを感じる場面も多いものです。
- 先代と後継者候補で、会社への思いの言葉がかみ合わない
- 昔の話になると、これからの話ができなくなる
- 何を、どの順番で話し合えばいいのか分からない
「なぜこの会社を続けてきたのか」と「これから続けたいか、どう続けたいか」は、別の問いです。創業の記録を、答えを押しつけるためではなく、話し合いの材料として使うと、それぞれの考えを落ち着いて言葉にしやすくなります。
この記事では、TADOROOTSで会社や家族の歩みを聞き取りから記録にまとめてきた調査担当が、創業の記録を後継者との対話に生かす方法をご紹介します。
この記事を読むと分かること
- 事業承継の選択肢と、後継者の考えの尊重
- 創業の記録を、対話の材料として使う方法
- 過去・現在・未来に分けた話し合いの進め方
- 話し合いで決めたことの残し方
事業承継には、いくつかの選択肢がある
事業承継には、親族への承継のほかに、役員・社員への承継、社外への引き継ぎ(M&A)といった選択肢があります。親族だからという理由だけで、引き継ぐ意思や力を決めつけないことが大切です。
創業の経験は、「守るべき答え」として渡すより、当時の状況と判断を知るための記録として残すのがおすすめです。いまは環境が違う、と後継者が考える余地も残しておきましょう。
対話は、過去・現在・未来の3つに分ける
話し合いは、過去(何を選んできたか)・現在(いま何が課題か)・未来(何を続け、何を変えたいか)の3つに分けると、話がすれ違いにくくなります。
| 時間 |
話す問い |
| 過去 |
何を選び、なぜ選んだのか(先代の経験と、それを裏づける資料) |
| 現在 |
いま何が課題になっているか(数字・現場の様子・まだ決まっていないこと) |
| 未来 |
何を続け、何を変えたいか(後継者の考えと、これから検討すること) |
過去の成功が、これからも同じように通用するとは限りません。「昔はこの方法がよかった」という話は、当時のお客様や市場の様子と一緒に記録しておくと、いまと比べながら読み返せます。
話し合いの進め方
話し合いは、1回にひとつの出来事を選び、決まったことと保留したことを分けて残すと、無理なく続けられます。
- 先代と後継者が、それぞれ聞きたいことと希望を書き出す
- 1回の話し合いでは、具体的な出来事をひとつ選ぶ
- 決まったことと、保留したことを分けて書き留める
- お金・契約・税・人事などの課題は、担当する人と相談先を決める
第三者に聞き役を頼む場合も、誰に何を共有するか、録音するかを事前に決めておきましょう。第三者が入れば必ず関係がよくなる、というわけではありません。
話し合いで決めたことの残し方
話し合いの記録は、それぞれの意見を、どちらかを正解にせずに残すのが基本です。
- 先代の考えと、後継者の考えを分けて書く
- 話し合った日と、参加した人を書く
- 社外に出す内容は、あらためて両方に確認する
意見が違う話も、それぞれの考えとして残しておくと、あとで読み返したときに、なぜその選択をしたのかが分かります。
まとめ:記録は、答えではなく対話の材料
- 事業承継には親族・役員や社員・社外への引き継ぎなど、いくつかの選択肢がある
- 創業の記録は、答えを押しつけるのではなく、対話の材料として使う
- 話し合いは過去・現在・未来に分け、決まったことと保留したことを残す
会社の歩みを一緒にたどる時間は、先代と後継者が、互いの思いを知る時間でもあります。記録を間に置くことで、言いにくかったことも、少しずつ言葉にできるかもしれません。
会社の歩みを、対話の材料に
TADOROOTSの「ルーツ経営プログラム」では、先代への聞き取りと手元の資料をもとに、会社の歩みを記録にまとめるお手伝いをしています。まとめた記録は、カンパニールーツブックとして、後継者や社員と共有することができます。くわしくはルーツ経営プログラム、料金はプラン診断・料金一覧でご覧いただけます。
よくある質問
Q. 後継者がまだ決まっていなくても、始められますか。
始められます。会社の歩みの記録は、誰に引き継ぐかを決める前からつくれます。記録づくりと、後継者を決めることは分けて進めましょう。
Q. 先代と後継者の考えが違う話も、残していいですか。
残せます。それぞれの考えとして記録しましょう。社外に出す内容に含めるかは、あらためて両方に確認します。
Q. 創業の記録を読めば、後継者は継ぐ気持ちになりますか。
約束はできません。記録は、後継者が会社の原点を知り、自分の考えを言葉にするための材料です。引き継ぐかどうかは、本人の意思を大切にしましょう。
Q. 話し合いは、何回くらい必要ですか。
会社や家族によって違います。1回でひとつの出来事を話すくらいのペースで、無理なく続けるのがおすすめです。
Q. 第三者に聞き役を頼んだほうがいいですか。
身内だけでは話しにくいことがあるときに、役立つことがあります。ただし、誰に何を共有するか、録音するかは、事前に決めておきましょう。
Q. 事業承継の手続きは、どこに相談すればいいですか。
各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターや、税理士・弁護士などの専門家に相談できます。中小企業庁の案内も参考にしてください。
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参照資料(2026-10-16確認)
対話の進め方は、本記事の編集上の提案で、承継への合意や経営の成果を約束するものではありません。