役所から届いた封筒を開けて、明治・大正の戸籍を広げたとき。ひいおじいさん、ひいおばあさんの名前がそこにあると分かって、胸が高鳴りますよね。
ところが、いざ読もうとすると――
- 筆で書かれた字が崩れていて、どこからどこまでが一文字なのか分からない
- 見たことのない形のひらがなが混じっている
- 名前の上に×印が引かれていて、ますます読めない
「せっかく取り寄せたのに、ご先祖様の名前すら読めない……」と、手が止まってしまった方も多いのではないでしょうか。
でも、安心してください。古い戸籍が読めないのは、あなたのせいではありません。 当時の書き方を知って、いくつかのコツを押さえれば、読める字はぐっと増えます。
この記事では、TADOROOTSで家系図づくりのために戸籍を読んできた調査担当が、実際の戸籍の画像を交えながら、読み解きのコツをご紹介します。
この記事を読むと分かること
- 古い戸籍が読みにくい3つの理由
- 昔のひらがな(変体仮名)で書かれた名前の読み方
- ×印が重なった名前の読み方
- 読めない名前を読み解く5つのコツ
古い戸籍が読めないのは、あなたのせいではありません
明治・大正の戸籍が読みにくいのには、はっきりした理由があります。
- 筆で崩して書かれている:役所の担当者が、筆で一枚一枚手書きしていました。書く人の癖もそのまま残っています。
- 昔のひらがなが使われている:いまのひらがなとは形の違う「変体仮名(へんたいがな)」が、名前などによく使われています。
- 線や印が重なっている:戸籍から抜けた人の名前には×の線が引かれ、文字と重なって見えにくくなっています。
どれも、当時の書き方を知らなければ読めなくて当たり前のものです。ひとつずつ見ていきましょう。
見慣れない形のひらがなは「変体仮名」かもしれません
戸籍の中で、漢字は読めるのに、ひらがなのところで止まってしまう。そんなときは、変体仮名を疑ってみてください。
ひらがなは、もともと漢字を崩して作られた文字です。いまは「は」と書けば形は一つだけですが、昔は同じ「は」にもいくつもの形がありました。下の図を見てください。

同じ「は」「る」でも、昔はこれだけの形がありました(活字の形。実際の戸籍は手書きのため、さらに崩れています)
いまの「は」とはまったく違う形も多いですよね。明治33年(1900年)に、学校で教えるひらがなが一つの音に一つの形へまとめられ、それ以外の形が「変体仮名」と呼ばれるようになりました。それより前に生まれた方の名前は、戸籍でもこの形で書かれていることがよくあります。
調査の現場でも、特に読み解きに時間がかかることが多いのが、戦前の女性の名前です。「はる」「きく」「とめ」のような、ひらがなの名前が多かったためです。同じ時代でも、カタカナで「ハル」とはっきり書いてある戸籍もあれば、変体仮名で書いてある戸籍もあり、地域や書き手によって書き方が違います。
×印が重なった名前の読み方

実際の戸籍に書かれていた「はる」という名前(名前の部分だけを切り出したもの)
上の画像は「はる」と読む名前です。崩した字の上に×の線が重なっていて、ぱっと見では何と書いてあるのか分かりにくいですよね。
この×印は、その人が戸籍から抜けた(除籍された)しるしです。結婚して別の家の戸籍に移った、亡くなった、などの理由で引かれます。もとは朱色の線ですが、写し(謄本)では文字と同じ黒で写るため、字と見分けにくくなります。
×印のある名前を読むときは、こんなふうに見てみてください。
- 線をいったん頭の中で消して、筆の書き始めと書き終わりを追う
- 同じ人が、別の欄や別の戸籍に×印なしで書かれていないか探す
- ×印は「亡くなった」という意味だけではないので、なぜ抜けたのかはその人の欄の文章で確かめる
読めない名前を読み解く5つのコツ
一文字をじっと見つめても読めないときは、まわりから攻めるのが近道です。調査担当が実際に使っているコツを、5つご紹介します。
コツ1 まわりの「読める字」から先に読む
名前のすぐそばには、続柄(長女・二女・妻など)や生年月日が書かれています。こちらは漢字と数字なので、名前よりずっと読みやすい部分です。
「戸主の二女で、明治20年生まれ」と分かるだけで、「その時代の女の子の名前」に候補をしぼって考えられます。
コツ2 同じ戸籍の「読める名前」と見比べる
一冊の戸籍は、たいてい同じ人が続けて書いています。書く人には癖があり、同じ音には同じ形の字をくり返し使うことが多いものです。
たとえば、読める名前「はな」の「は」と、読めない名前の一文字目が同じ形なら、その字も「は」である可能性が高くなります。同じ戸籍の中に、答えのヒントが隠れていることはよくあります。
コツ3 同じ人が出てくる別の戸籍を探す
いちばん頼りになるのが、このコツです。一人の人は、一生のうちに何通かの戸籍に書かれます。
- 生まれた家の戸籍と、結婚した先の戸籍:結婚して家を移った人は、両方に名前が出てきます
- 子どもの戸籍の「母」の欄:子どもの戸籍にも、母として名前が書かれています
- 新しく作り直された戸籍:昭和30年代ごろの作り直しのときまで戸籍に残っていた人は、新しい書き方の戸籍に書き直されています
書く人が違えば、崩し方も違います。ある戸籍では読めなかった名前が、別の戸籍ではカタカナで読みやすく書かれていた、ということも珍しくありません。戸籍の種類については、こちらの記事で紹介しています。
コツ4 候補を声に出してみる
候補を2つ3つにしぼれたら、声に出して読んでみましょう。「とめ」「すゑ」「きく」――当時の名前として自然に聞こえるかどうかも、大切な手がかりです。
ただし、「それらしいから」だけで決めずに、コツ2・3の裏付けと合わせて判断してください。
コツ5 分からない字は「?」のままで大丈夫
ここまでやっても読めない字は、無理に決めずに残しておきましょう。
| 書き方の例 |
意味 |
| はる |
別の戸籍でも確かめられた |
| はる?(はな?) |
一文字目は「は」。二文字目は候補がある |
| □る |
一文字目がまだ読めない |
あとで別の戸籍が見つかったときに、ここから読めることもあります。分からないところを分からないと残しておくのは、正確な家系図を作るための大事な一歩です。
字の形を調べたいときに役立つ資料
もっと詳しく字の形を調べたい方には、大学や研究機関が公開している、無料の資料が役立ちます。
- くずし字の形を調べる:奈良文化財研究所などが公開している「史的文字データベース連携検索システム」で、昔の字の形を調べられます
- 写真から字を読む:人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)のAIくずし字認識アプリ「みを」は、スマホで撮った字の候補を出してくれます
- くずし字の辞典を探す:国立国会図書館のレファレンス事例に、古い戸籍を読むための辞典の調べ方がまとめられています
AIのアプリは、主に江戸時代の本で学んでいるため、明治・大正の戸籍の手書きの字では読み違えることもあります。「候補を教えてくれる道具」として、5つのコツと組み合わせて使うのがおすすめです。
なお、戸籍の写しには、調べたい人以外の方の名前や生年月日も書かれています。アプリやインターネットで誰かに見せるときは、読みたい名前の部分だけを切り出して、ほかの人の情報が写らないようにしてくださいね。
まとめ:読めた瞬間、ご先祖様がぐっと身近になります
- 古い戸籍が読めないのは、筆の崩し字・昔のひらがな・重なった線のせい。あなたのせいではありません
- 一文字を見つめるより、まわりの字、同じ戸籍の読める名前、同じ人が出てくる別の戸籍から攻めるのが近道
- 分からない字は「?」のまま残してOK
読めなかった名前が「はる」だと分かった瞬間、戸籍の中の一行が、確かにこの世を生きた一人の女性として立ち上がってきます。ご先祖様の名前が読めると、その人がどんな時代を生きたのか、もっと知りたくなるはずです。
読めない名前も、家系図の中で確かめていきます
TADOROOTSでは、戸籍を集め、一人ひとりの名前を前後の記載や別の戸籍と照らし合わせながら読み解き、ご先祖様を家系図の中に位置づけていきます。読めなかった名前も、結婚した先の戸籍や子どもの戸籍と合わせて確かめます。
「この名前、なんて読むんだろう」から、「この人は、こんな家に生まれて、こんな家族の中で生きたんだ」へ。手元の戸籍から家系図を作ってみたい方は、お気軽にご相談ください。プランの違いは家系図制作・ルーツ調査、料金はプラン診断・料金一覧でご覧いただけます。
よくある質問
Q. 変体仮名とは何ですか。
いまのひらがなとは形の違う、昔のひらがなです。ひらがなは漢字を崩して作られたため、同じ音にいくつもの形がありました。明治33年(1900年)に学校で教えるひらがなが一つの音に一つの形へまとめられ、それ以外の形が変体仮名と呼ばれるようになりました。
Q. 名前に×印がついているのは、亡くなったという意味ですか。
亡くなったことだけを意味するわけではありません。結婚して別の家の戸籍に移った人や、亡くなった人など、その戸籍から抜けた人の名前に×の線が引かれます。なぜ抜けたのかは、その人の欄の文章に書かれています。
Q. 同じ人なのに、戸籍によって書き方が違うのはなぜですか。
書かれた時期や地域、書いた人によって書き方が違うためです。同じ人でも、生まれた家の戸籍では変体仮名、結婚した先の戸籍ではカタカナ、ということがあります。読めないときは、同じ人が出てくる別の戸籍を探すと読めることがあります。
Q. スマホのアプリで読めますか。
くずし字を読むAIのアプリはあります。ただ、主に江戸時代の本で学んでいるため、明治・大正の戸籍の手書きの字では読み違えることもあります。候補を出してくれる道具として使い、同じ戸籍の読める名前や、別の戸籍と見比べて確かめるのがおすすめです。
Q. 戸籍の画像をインターネットに載せて、読み方を聞いてもよいですか。
おすすめしません。戸籍の写しには、調べたい人以外の方の名前や生年月日も書かれているためです。どうしても誰かに見せるときは、読みたい名前の部分だけを切り出して、ほかの人の情報が写らないようにしてください。
Q. 読めない字があるまま、家系図を作ってもいいですか。
作れます。確かめられた名前と、まだ候補の名前を分けて書いておけば、あとで別の戸籍が見つかったときに直せます。それらしい名前を確かなもののように書いてしまうと、別の人の戸籍を取り寄せてしまうなどの間違いにつながるので注意しましょう。
Q. 読めない名前を、TADOROOTSに読んでもらうことはできますか。
文字を読むだけのご依頼は、お受けしていません。TADOROOTSでは、戸籍を集めて家系図を作る中で、読めない名前も前後の記載や別の戸籍と照らし合わせて確かめていきます。手元の戸籍から家系図を作りたい方は、家系図づくりのご相談としてお気軽にお問い合わせください。
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参照資料(2026-10-16確認)