事業承継で親子の対話が進まない理由|創業者の想いを伝える方法

親子で経営している会社の後継者に話を聞くと、意外な共通点があります。「毎日顔を合わせているのに、創業のいきさつをちゃんと聞いたことがない」というものです。
これは家族の距離が遠いから起きているのではありません。むしろ距離が近すぎるからこそ起きています。
「知っているはず」が会話を止めます
親子であれば、多少のことは「言わなくても伝わっている」と互いに思い込みやすいものです。先代は「もう何度も話したはずだ」と思い、後継者は「今さら聞くのも気恥ずかしい」と感じています。この二つの遠慮が重なると、核心的な話ほど、実は一度もきちんと言葉にされないまま何十年も過ぎていきます。
日常の会話は、たいてい今日の業務の話で埋まります。今月の売上、新しい取引先、人手の話。創業当時の苦労や判断の理由は、雑談のついでに少し出てくることはあっても、腰を据えて聞かれることはめったにありません。
自分たちだけで話そうとすると、うまくいかない理由
「今度ちゃんと聞いてみよう」と思い立っても、いざ面と向かうと日常の口調に引きずられ、雑談で終わってしまうことがよくあります。親子という関係性そのものが、あらたまった話をしにくくする方向に働くためです。質問する側も身構えてしまい、答える側も「今さら」と照れが先に立ちます。
これを避けるために有効なのは、日時をあらかじめ決めて「聞く時間」として区切ること、そして聞く内容を事前にいくつか用意しておくことです。「なぜこの土地で始めたのか」「一番苦しかった時期に何を選んだのか」といった具体的な問いを用意しておくと、雑談に流れずに済みます。
第三者が入ると、語られる内容が変わります
これは経験則ですが、家族以外の第三者が「聞き役」として入ると、同じ話でも語られる中身が変わることがあります。家族には照れくさくて言えないことも、外部のインタビュアーが相手だと言葉にしやすくなる、という心理的な作用があるようです。
TADOROOTSのルーツ経営プログラムで先代への聞き取りを行うと、後継者が同席していても「初めて聞いた」という反応が返ってくることは珍しくありません。何十年も同じ会社で働いてきた親子であっても、です。専門のインタビュアーが間に入ることで、質問の組み立て自体もより具体的になり、記憶を引き出しやすくなるという効果もあります。
記録に残すと、何度でも読み返せます
もう一つの利点は、聞いた話がその場限りで消えないことです。口頭で聞いた話は、時間が経つと記憶があいまいになり、細部が変わっていきます。記事や書籍という形で残しておけば、後継者は何年経ってからでも読み返せますし、次の世代にもそのまま渡せます。
想いは、伝えようとするだけでは伝わらないことがあります。伝わる形に、意図的に変換する作業が必要です。
よくある質問
Q. 先代が話し下手で、うまく引き出せるか心配です。 A. 問題ありません。聞き取りは雑談形式で進め、具体的な出来事について一つずつ質問していく形を取ります。話すことが得意でない方でも、具体的な質問には答えやすいことが多くあります。
Q. 親子関係がやや複雑で、第三者を入れることに抵抗があるかもしれません。 A. そのような場合こそ、第三者が間に入る意味があります。家族間の感情を挟まずに、事実を事実として聞き取ることができます。
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