公正証書遺言の作成件数は年々増えています。日本公証人連合会の統計によると、2023年に全国で作成された公正証書遺言は11万8,981件で、統計開始時の1989年と比べて約3倍に増えました。財産をめぐるトラブルを避けたい、家族に迷惑をかけたくない、という動機はよく理解できます。実際に準備を進める方の多くは、かなり丁寧に財産目録を作り、誰に何を残すかまで細かく詰めています。

そこまでやったうえで、ふと聞かれることがあります。「ところで、遺言書にこの気持ちも書けますか」と。

遺言書の種類と、それぞれの限界

遺言書には主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は自分で手軽に作成できる一方、形式不備で無効になるリスクや、相続開始後に家庭裁判所での検認が必要になる手間があります。公正証書遺言は公証人が関与するため形式面での安全性は高いものの、証人の手配や公証役場との調整が必要です。

どちらの形式を選んでも共通しているのは、法的効力を持つのは財産の分配に関する条文部分に限られるという点です。「思い」の部分は、付言事項として書き添えることはできても、あくまで補足にとどまります。

遺言書に書ける言葉は、思いのほか少ないものです

付言事項という形で、財産分配の理由や家族への思いを書き添えることはできます。ただし、これは法的効力のない、あくまで補足です。分量にも限りがありますし、そもそも遺言書という形式自体が「思いを伝える」ためには不向きにできています。

自分がどんな人生を歩んできたか。何を大事にして、何を諦めてきたか。誰にどれだけ助けられたか。こうした話は、条文のような文章には収まりません。書こうとすればするほど、そぎ落とされていきます。

遺言書そのものの保管は、法務局にご相談ください

遺言書の紛失や改ざんを防ぐ方法について、準備を進める中で気になる方も多いと思います。自筆証書遺言であれば、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」(令和2年7月10日開始)を使うと、1件3,900円の手数料で法務局が原本を保管してくれ、相続開始後の家庭裁判所での検認も不要になります。申請は遺言者本人が法務局に出向く必要があり、代理申請はできません。公正証書遺言の場合は、原本が公証役場で保管される仕組みになっています。

TADOROOTSは遺言書の作成や保管そのものはお手伝いできません。遺言書の保管・検認・法的な相談については、法務局や公証役場、弁護士・司法書士など専門家にご相談ください。TADOROOTSがお手伝いするのは、あくまで遺言書とは別に残す「人生の記録」の部分です。

「財産の話」と「人生の話」を分けて残します

TADOROOTSでは、遺言書の準備と並行して、家族の歴史をインタビュー形式で聞き取り、一冊の本として残す「Family Roots Book」というサービスを提供しています。財産の分配は遺言書に、人生の記録は別の一冊に。役割を分けることで、それぞれが本来の目的をきちんと果たせるようになります。

実際に依頼される方の多くは、遺言書の準備をきっかけにこの話にたどり着きます。「せっかく人生を振り返る機会だから、財産のことだけでなく、生きてきた記録も残したい」という流れです。

聞ける時間は、思っているより短いものです

公正証書遺言の作成には、公証人との打ち合わせ、証人の手配など、それなりの準備期間がかかります。この期間を使って、家族の歴史のインタビューも並行して進めることができます。

体調や記憶がしっかりしているうちにしか、正確な話は聞けません。財産の整理と一緒に、人生の記録も整理しておくことをお勧めします。

よくある質問

Q. 自筆証書遺言を検討していますが、それでも依頼できますか。 A. 可能です。遺言書の形式にかかわらず、家族の歴史の記録は独立したサービスとしてご利用いただけます。

Q. 付言事項に書く内容の参考として使うこともできますか。 A. はい。インタビューで整理した内容の一部を、付言事項としてご自身の言葉でまとめる際の材料としてお使いいただくことも可能です。

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