戸籍を1通ずつさかのぼっていくと、ご先祖様の欄に「養子」「婿養子」といった言葉が出てくることがあります。
いまの感覚では「養子」と聞くと、何か特別な事情があったのではと、少し胸がざわつくかもしれません。
- 養子って、どういうことだったのだろう
- うちの家系は、血がつながっていないのかな
- 「婿養子」や「入夫(にゅうふ)」は、何が違うのだろう
でも、安心してください。昔の日本では、養子は家を守るためのごく身近な方法でした。家系図をさかのぼって養子に出会うのは、決して珍しいことではありません。
この記事では、法律事務所で相続・信託の実務に10年携わり、TADOROOTSで家系図づくりのために戸籍を読んできた調査担当が、昔の養子といまの養子の違い、養子・婿養子・入夫婚姻の違い、そして家系図に書くときのコツをご紹介します。
この記事を読むと分かること
- ご先祖様に養子がいるのは、どのくらい普通のことなのか
- 昔の養子と、いまの養子の違い
- 養子・婿養子・入夫婚姻の違い
- 家系図での書き分け方と、戸籍での見つけ方
ここでの説明は、法律の正確な定義ではなく、戸籍を読んで家系図をつくるための説明です。相続など法的な判断が必要なときは、専門家にご確認ください。
ご先祖様に養子がいるのは、珍しいこと?
ご先祖様に養子がいるのは、珍しいことではありません。内閣府の男女共同参画白書(令和4年版)では、幕末の農民では戸主のおよそ2割が養子で、武士ではその割合がさらに高かったと紹介されています。
昔は、家を継ぐ男の子がいないときや、跡継ぎが幼いうちに亡くなったときなどに、親戚や近所の家から養子を迎えて家を守ることが、ごく当たり前に行われていました。娘と結婚する男性を家に迎える「婿養子」も、よくある家の継ぎ方でした。
家系図をさかのぼって養子に出会ったら、それは「この家を絶やさず、次の世代へつなごうとした人たちがいた」というしるしです。
昔の養子と、いまの養子は何が違う?
昔といまの養子は、目的がまったく違います。昔の養子は「家」を継ぐため、いまの養子は「人」の幸せや暮らしのためのものが中心です。
| 時代 |
養子の主な目的 |
明治〜昭和22年 (戦前の民法) |
家の跡継ぎを迎えるため。大人を養子にすることも多く、婿養子や、親戚の子を養子にすることがよくありました |
昭和23年〜いま (いまの民法) |
子どものため、家族のため。再婚した相手の子どもとの縁組や、生みの親と暮らせない子どもを迎える特別養子縁組(昭和63年〜)など、目的はさまざまです |
戦前の民法では、家を単位にして、戸主が家を継いでいく仕組みでした。そのため、家を残すための養子縁組は、家族の大切な選択の一つでした。昭和22年に家の制度がなくなってからは、養子縁組は「家」ではなく、親子や家族の関係そのもののためのものになりました。
ですから、ご先祖様の養子縁組を、いまの感覚で受け止める必要はありません。当時の暮らしの中で、家族が考え抜いた選択だったのです。
養子・婿養子・入夫婚姻は、何が違う?
3つの違いは、誰の子になるのかとどの家に入るのかです。
| 言葉 |
どういうこと |
養子縁組 (ようしえんぐみ) |
生まれによる親子ではない人と、法律上の親子になることです(親戚の子や孫を養子にすることもあります)。養子は養親の子になり、養親の家に入ります。実の親との親子のつながりも続きます |
婿養子縁組 (むこようしえんぐみ) |
娘と結婚する男性を、同時にその家の養子として迎えることです。夫は妻の父母の子にもなり、妻の家の名字を名のります |
入夫婚姻 (にゅうふこんいん) |
女性の戸主と結婚した夫が、妻の家に入る結婚です。夫は妻の家の名字を名のりますが、妻の父母の養子にはなりません |
入夫は「にゅうふ」と読みます。婿養子と入夫は、どちらも日常の言葉では「婿入り」「入り婿(いりむこ)」と呼ばれることがありますが、戸籍の上では別のものです。
婿養子縁組と入夫婚姻は、どちらも「夫が妻の家に入る」ので似ていますが、妻の父母の養子になるかどうかが大きな違いです。婿養子は、妻の父母と点線でもつながります。入夫は、妻と二重線で結ぶだけで、妻の父母とは線でつなぎません。
なお、婿養子縁組と入夫婚姻は、「家」を単位にした明治のはじめから昭和22年までの制度の言葉で、明治31年の民法で制度として定められました。いまの民法には、この2つの制度はありません。現在は、結婚のときに妻の名字を選び、それとは別に妻の父母と養子縁組をする形になります。
家系図では、どう書き分ける?
家系図では、結婚を二重線、実の親子を実線、養子縁組を点線で書き分けるのが分かりやすい方法です。養子に入った人は、実の親とも、養親とも線でつなぎます。

線を書き分けておくと、ひと目で「この人は、どの家に生まれ、どの家に入ったのか」が分かります。TADOROOTSの家系図でも、結婚は二重線、養子縁組は点線で書いています。
戸籍のどこを見れば分かる?
養子縁組や婚姻のことは、その人の欄の「身分事項」に、届け出の記録として書かれています。
明治・大正の戸籍では、名前の上の欄に、「〇〇ト養子縁組届出」「婿養子縁組婚姻届出」「入夫婚姻ノ届出」のような一文が書かれています。書き方は、戸籍の様式や役所によって少しずつ違います。
養子に入った人の欄には、実の父母の名前とあわせて、養父・養母の名前が書かれていることが多くあります。また、生まれた家(実家)の戸籍には、「養子縁組ニ因リ除籍」のように、その家を出たことが書かれています。
家系図に書くときの3つのコツ
養子や婿養子のご先祖様を家系図に書くときは、両方の線を残す・続柄を混ぜない・実家の名前を添えるの3つを心がけましょう。
1. 実の親と養親、両方の線を残す
養子に入った人は、養親の家の人として書くだけでなく、実の親とも線でつないでおきます。どちらか一方だけにすると、もう一つの家とのつながりが見えなくなってしまいます。
2. 続柄は「養子」「養女」と書き、生まれ順と混ぜない
養親の家では「養子」「養女」と書き、実家では「二男」「三女」のような生まれ順を書きます。養子を実の子どもと一緒に「長男・二男……」と数えると、実の子どもの続柄がずれてしまうので気をつけましょう。
3. 婿養子・入夫には、実家の名字を添える
婿養子や入夫として妻の家に入った人は、妻の家の名字で書かれます。名前のそばに「〇〇家より」と実家の名字を添えておくと、どこから来た人なのかが、ひと目で分かります。
婿養子のご先祖様の実家も、たどれる?
婿養子や養子に入ったご先祖様の実家も、戸籍でたどることができます。
養子に入っても、実の親はあなたにとって「まっすぐ上の世代」のご先祖様です。そのため、実家の戸籍も、自分の家の戸籍と同じように請求できます。実家の戸籍をさかのぼると、もう一つの家系が見えてきます。つまり、養子や婿養子のご先祖様がいると、たどれる家系が一つ増えるのです。
婿養子のご先祖様がいる家系図は、2つの家の歴史が出会う場所でもあります。「どんな家から、どんな思いで婿に入ったのだろう」と想像しながらたどると、家系図がぐっと味わい深くなりますよ。
家族が知らなかった養子縁組が見つかったら
戸籍をさかのぼると、家族も知らなかった養子縁組が見つかることがあります。
祖父母や父母の世代の養子縁組は、ご家族の中でも話されていなかったことがあります。家系図を家族で囲む前に、誰にどこまで見せるかを、少し考えておくと安心です。
家系図は、誰かを責めるためのものではなく、家族がどうつながってきたかを知るためのものです。分かったことは、ご家族の気持ちを大切にしながら、ゆっくり共有していきましょう。
まとめ:養子は、家をつないできた人のしるし
- 昔の日本では、養子は家を守るための身近な方法だった
- 結婚は二重線、実の親子は実線、養子縁組は点線で書き分ける
- 婿養子は妻の父母の養子にもなり、入夫は妻の父母の養子にはならない
- 養子に入ったご先祖様の実家も、戸籍でたどれる
養子や婿養子のご先祖様は、2つの家をつないできた方です。その方を家系図の中に正しく位置づけると、家族の歴史がいっそう立体的に見えてきます。
2つの家の歴史も、一枚の家系図に
TADOROOTSでは、戸籍をさかのぼって、ご先祖様を家系図の中に位置づけるお手伝いをしています。養子縁組や婿養子縁組で家と家がつながっている場合も、実の親と養親の両方の線を残し、2つの家の歴史が分かる家系図にまとめます。婿養子のご先祖様の実家まで含めてたどりたいときは、2家系・4家系のプランで、まとめて調べることもできます。家系図に載せる範囲や見せ方も、ご家族の気持ちに合わせてご相談いただけます。
なお、明治の戸籍は、保存期間(150年)を2030年代後半から順に迎えていきます。気になるご先祖様がいるなら、戸籍が取れるうちに始めておくと安心です(古い戸籍はいつまで取れる?)。家系図づくりは家系図制作・ルーツ調査、料金はプラン診断・料金一覧でご覧いただけます。
よくある質問
Q. 養子に入ったご先祖様の実の親も、家系図に書いたほうがいいですか。
書いておくのがおすすめです。実の親とのつながりを残しておくと、もう一つの家系をたどる手がかりになります。実の親とは実線、養親とは点線で結ぶと、ひと目で分かります。
Q. 「婿養子縁組」と「入夫婚姻」は、何が違いますか。
どちらも夫が妻の家に入る結婚ですが、婿養子は妻の父母の養子にもなり、入夫は養子にはなりません。家系図では、婿養子は妻の父母と点線でもつなぎ、入夫は妻と二重線で結ぶだけにします。
Q. ご先祖様に養子がいるのは、珍しいことですか。
珍しいことではありません。内閣府の男女共同参画白書(令和4年版)では、幕末の農民では戸主のおよそ2割が養子で、武士ではさらに多かったと紹介されています。家を継ぐ人を迎えるための、ごく身近な方法でした。
Q. 昔の養子と、いまの養子は何が違いますか。
昔の養子は、家の跡継ぎを迎えるためのものが中心でした。昭和22年に家の制度がなくなってからは、子どもや家族のための養子縁組が中心になり、目的が大きく変わっています。
Q. 「入夫」は何と読みますか。
「にゅうふ」と読みます。女性の戸主と結婚して、妻の家に入った夫のことです。
Q. 「婿入り」と「婿養子」は同じですか。
同じではありません。いまの言葉の「婿入り」は、夫が妻の名字を選んで結婚することを広く指します。「婿養子」は、そのうえで妻の父母と養子縁組もして、妻の父母の子になることです。戦前の戸籍では、「婿養子縁組」と「入夫婚姻」として書き分けられています。
Q. 養子縁組を解消した(離縁した)人は、家系図にどう書きますか。
戸籍に「離縁」と書かれていれば、養親との点線を残したうえで「離縁」と書き添えておくと、その人の歩みが分かります。元の家に戻った(復籍した)ことも、あわせて書いておきましょう。
Q. 家族が知らなかった養子縁組が見つかったら、どうすればいいですか。
まずは、家系図を家族で囲む前に、誰にどこまで見せるかを考えておくと安心です。分かったことは、ご家族の気持ちを大切にしながら、ゆっくり共有していきましょう。
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参照資料(2026-10-16確認)